04/08/2026
インド工科大学デリー校のMishra Amruta教授とハドロン物理学研究室のZhao Shujun (PD)、平野哲文(PI)は
Diffusion and shear viscosity coefficients of hot isospin asymmetric strange hadronic matter using a chiral SU(3) model
という題目の論文をプレプリントサーバーarXivに投稿しました。
原子核を構成する陽子・中性子に加えて、「ストレンジネス」と呼ばれる属性をもつハイペロン粒子を含む高温・高密度の核物質の輸送特性を理論的に研究しました。
重イオン衝突実験では、通常の物質とは大きく異なる極限状態の核物質が一瞬だけ生成されます。そのような環境で、粒子や各種の量子数(バリオン数、アイソスピン、ストレンジネス)がどの程度拡散するのか、また物質がどれだけ流れにくいかを表す「粘性」が重要な役割を果たします。
本研究では、量子色力学(QCD)の対称性を取り入れた「カイラルSU(3)模型」を用いて、高温・高密度のストレンジ核物質における拡散係数とせん断粘性係数を計算しました。
その結果、
・ストレンジ粒子(ハイペロン)の存在によって、物質中での拡散の仕方が大きく変化する
・ストレンジネスを含むと、せん断粘性が大幅に増加する
・陽子と中性子の数の偏り(アイソスピン非対称性)も拡散現象に重要な影響を与える
ことが分かりました。
これらの成果は、ドイツのFAIR施設で進められているCBM実験や、日本で計画されているJ-PARC-HI計画など、高密度核物質を探る次世代重イオン衝突実験のデータ解釈に役立つことが期待されます。