岐阜大学大学院 医学系研究科 脳神経内科学分野

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03/07/2026

岐阜大学脳内抄読会 第107,108回 6年生ふたりが挑む「ALSにおける呼吸苦の意外なメカニズム」と「群発頭痛に対するエプチネズマブ試験は成功していた!?」

今週のオンライン抄読会です.当科で選択実習を行った6年生の長岡瑞希さんと永井志穂莉さんが,それぞれ興味深い論文を紹介してくださいました.いずれも論文を丁寧に読み解き,新たな気付きを与えてくれるドクター顔負けの素晴らしい発表でした.

まず長岡さんは,「ALSにおける努力性呼吸と大脳皮質活動」というタイトルで,ALS患者さんの呼吸筋低下に対して,脳がどのように代償しているのかを検討した研究を紹介してくださいました.ALSでは横隔膜が弱くなると,覚醒時に頸部の吸気筋が動員されますが,本研究では,その際に通常の安静呼吸ではみられない呼吸関連大脳皮質活動(PIPs)が出現することが示されました.さらに,非侵襲的換気療法(NIV)によってこの大脳皮質活動と頸部筋活動が低下し,呼吸困難も著明に改善しました.大脳皮質の動員は呼吸を維持するための代償機構である一方,努力感や息苦しさを増強する可能性があるという,大変興味深い内容でした.大変勉強になる発表でした.

一方,永井さんは,「群発頭痛に対するエプチネズマブ」というタイトルで,反復性群発頭痛に対する抗CGRP抗体エプチネズマブの有効性と安全性を検討したランダム化比較試験を紹介してくださいました.主要評価項目である投与後1~2週の週間発作回数は,エプチネズマブ群とプラセボ群で有意差を認めず,試験としては陰性という結果でした.しかし,投与後2~4週の50%以上のレスポンダー率や75%以上のレスポンダー率,疼痛や患者報告アウトカムでは,エプチネズマブの効果を示唆する結果も認められました.群発期には自然経過によって発作回数が急速に減少する患者さんもいるため,平均発作回数を主要評価項目とすることの難しさ,つまり適切な主要評価項目を設定する重要性について,分かりやすく説明してくださいました.

おふたりとも,難しいテーマに正面から取り組み,論文の要約にとどまらず,病態の理解や臨床応用,研究デザインの問題点まで踏み込んで考察してくださいました.非常に立派な内容でした.ご指導くださった教室の先生方にも,心より感謝いたします.

Georges M, et al. Cortical drive to breathe in amyotrophic lateral sclerosis: a dyspnoea-worsening defence? Eur Respir J. 2016;47:1818-1828. doi:10.1183/13993003.01686-2015.

Jensen RH, et al. Efficacy and Safety of Eptinezumab in Episodic Cluster Headache: A Randomized Clinical Trial. JAMA Neurol. 2025;82:706-714. doi:10.1001/jamaneurol.2025.1317.

待望の「PSP診断基準整理支援ツール」を公開しました!!進行性核上性麻痺(PSP)の診断基準であるMDS-PSP criteria(Mov Disord 2017;32:853-864)は,多様な病型分類を可能にした点で非常に有用です.一方...
05/06/2026

待望の「PSP診断基準整理支援ツール」を公開しました!!

進行性核上性麻痺(PSP)の診断基準であるMDS-PSP criteria(Mov Disord 2017;32:853-864)は,多様な病型分類を可能にした点で非常に有用です.一方で,病期が進行するにつれて複数の病型基準を満たすことが多く,その場合にはMAX ruleを用いて優先順位を判断する必要があります.2019年には有志とともに日本語版を作成し公開しましたが,それでも実際の臨床で用いるには非常に複雑な診断基準です.

このため当科では以前,診断を補助するツールとして「PSP Dx Assist」を作成し,公開していました.しかし,その後バグがあることが判明し,作成者も教室を離れたため,残念ながら公開を中止していました.その後も,多くの先生方から「もう一度,このようなツールを作ってほしい」というお声をいただいておりました.

そのような声は,私以外の教室メンバーにも届いていたようで,教室メンバーの下郷雅也先生が,「PSP診断基準整理支援ツール」を開発してくださいました.みんなに役に立つと考えて,自発的に取り組んでくださったことは本当に嬉しく思いました.その後,下郷先生と私でいろいろとテストを行いましたが,現時点では問題は見つかっていません.以前のツールよりも洗練され,より分かりやすく,使用しやすいものになっていると思います.

ぜひご活用いただき,もし不具合やお気づきの点がありましたら,ご教示いただけますと幸いです.注意事項はツール内に記載しておりますので,よくご確認のうえ,最終的な診断は総合的にご判断ください.当科ホームページ左側のバナーからお入りいただけます.PCでもスマートフォンでも使用できます.

また,下郷雅也先生は,筋力検査(MMT)の所見から,障害されている神経局在を推論するアプリ「MMT Calculator」も作成されました.私も使用していますが,非常によくできたアプリです.MMT初学者の学習をサポートしてくれるアプリとして,こちらもお勧めです.宜しければ教育や臨床にご使用ください.

★いずれもリンクはコメント欄にあります.

04/06/2026

岐阜大学脳内抄読会 第105,106回 6年生ふたりが挑む「ALSの呼気筋トレーニング」と「HAMの病態研究」

今週のオンライン抄読会です.当科で選択実習中を行った6年生のふたりが挑戦してくださいました.いずれも本当に素晴らしい発表でした.

まず山田義敬君は,実習中にALS患者さんを担当し,喀痰による呼吸苦についてお話を伺ったことをきっかけに,診療ガイドラインを確認し,呼気筋トレーニングに関心を持って関連論文を読んでくれました.さらに言語聴覚士の先生にも意見を伺い,当院ではどのように対応すべきかというところまで検討してくださいました.私たち医師にとっても大変勉強になる内容でした.まさに抄読会としても,学生実習のトレーニングとしても,大変理想的に思える発表でした.発表は9分,質疑応答は5分でした.

一方,中川正惟君は,「HTLV-1関連脊髄症におけるTax依存的RGMa誘導と神経障害の分子機構」というタイトルで,聖マリアンナ医科大学の山野嘉久先生のチームによる重要な研究を紹介してくださいました.本格的な病態研究でありながら,内容をしっかり理解したうえで,分かりやすく伝えようとする姿勢が大変素晴らしかったです.スライドにも多くの工夫が凝らされており,非常に立派な発表でした.発表は16分,質疑応答は12分でした.ご指導くださっている教室の先生方にも,心より感謝いたします.

Mendes Araújo L, Chianca T, Persaud C, Hartung P, Soares Y, Almirón G, João R. Respiratory strength training for patients with amyotrophic lateral sclerosis: A meta-analysis of randomized controlled trials. Respir Med. 2026 Jan;251:108560. doi: 10.1016/j.rmed.2025.108560. Epub 2025 Dec 5. PMID: 41354105.

Araya N, Yamagishi M, Nakashima M, Asahara N, Kiyohara K, Aratani S, Yagish*ta N, Horibe E, Ishizaki I, Watanabe T, Sato T, Uchimaru K, Yamano Y. Virus-induced RGMa expression drives neurodegeneration in HTLV-1-associated myelopathy. JCI Insight. 2025 Apr 24;10(11):e184530. doi: 10.1172/jci.insight.184530. PMID: 40305434

恩師のおいしいマカロン恩師であり,今なお私(下畑享良)のメンターでもある堀川楊先生が,「教室のみんなで召し上がって」と,新潟市のパティスリースガマタさんのマカロンを送ってくださいました.早速,臨床実習中の医学生と教室のメンバーみんなで,いた...
25/05/2026

恩師のおいしいマカロン

恩師であり,今なお私(下畑享良)のメンターでもある堀川楊先生が,「教室のみんなで召し上がって」と,新潟市のパティスリースガマタさんのマカロンを送ってくださいました.早速,臨床実習中の医学生と教室のメンバーみんなで,いただきました.上品な甘さの,とっても美味しいマカロンでした.堀川先生は折にふれて,新潟名物の笹団子など,いつも温かなお心遣いを届けてくださいます.

堀川先生は,当時としては画期的であった,患者さんのQOL向上をめざす難病ケアのモデル(いわゆる「新潟方式」)を,長い年月をかけて築き上げられた先生です.医師3年目,脳神経内科医になったばかりだった私は,先生のもとで,新潟大学初代教授の椿忠雄先生のお話を数多く伺い,また先生のあとについて多くの患者さんの往診にも同行させていただきました.褒めていただいたこともありましたが,厳しく叱られたことを良く覚えています.そして「キュアできない患者さんをケアすることの大切さ」を学ばせていただいたことは,今も自分の診療の原点になっています.

先週の学術大会では,Natalia S. Rost 教授が,メンターを持つことの大切さを話しておられました.メンターとは,自らの経験や知識をもとに,相手の成長を支え,助言し,そして温かく見守ってくれる存在だと思います.私にとって最初のメンターが堀川先生であったことは,本当に大きな幸運でした.教室の若い先生方や医学生にも,先生から学んだことをこれからも伝えていきたいと思っています.今回,マカロンをいただいた皆さんには,「マカロンを食べた人は,こちらもぜひ読んでくださいね」と,堀川先生の資料もあわせてお送りしました.

赤ひげ大賞|堀川楊先生「地域とともに歩む難病医療」
https://www.akahige-taishou.jp/book/case07/article3.html)

甘いマカロンとともに,先生から受け継いできた大切な学びもまた,教室のみんなに届いていってほしいと思いました.

02/05/2026

岐阜大学脳内抄読会 第103,104 回 ALSをめぐる重要な2つのトピックス―安楽死とBrain–Machine Interfaceに2人の若手が挑戦

今週のオンライン抄読会です.この1か月間,脳神経内科で研修を行った2年目の小森拓夢先生と佐藤健龍先生が,いずれもALSに関する新しく,かつ重要なテーマに取り組んでくださいました.

小森先生は,難病医療における極めて重要かつ複雑な倫理的課題である安楽死について,オランダにおけるALS患者の実態を検討した論文を紹介されました.安楽死を選択した患者さんの背景や理由を丁寧に読み解くことで,患者さんのQOL向上につながる示唆が得られるのではないかという問題意識に基づいた発表であり,大変意義深いものでした.発表後には多くの質問や意見が寄せられ,活発な議論が展開されました.一方で,本テーマは単一の論文だけで十分に論じ尽くせるものではないため,最後に私からも解釈の視点について補足説明を行いました.発表19分,質疑29分でした.

一方,佐藤先生は,ALSの進行に伴い患者さんにとって大きな苦痛となる言語機能の喪失に対し,Brain–Machine Interface(BMI)を用いた支援の可能性についての論文を紹介されました.さらに,関連分野の近年の進歩や基本用語についても整理され,理解を深める内容となっていました.論文のまとめ方も非常に現代的で工夫に富んでおり,印象に残る発表でした.お二人ともBMIに強い関心を持っておられるとのことで,将来的にこの分野での研究に挑戦されることを大いに期待したいと思います.発表12分,質疑15分でした.

van Eenennaam RM et al. Frequency of euthanasia, factors associated with end-of-life practices, and quality of end-of-life care in patients with amyotrophic lateral sclerosis in the Netherlands: a population-based cohort study. Lancet Neurol. 2023 Jul;22(7):591-601. PMID: 37353279.

Card NS, et al. An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):609-618. doi: 10.1056/NEJMoa2314132. PMID: 39141853

植樹から3年,ヒポクラテスの木にたくさんの花が咲きました!2023年3月に植樹したヒポクラテスの木ですが,1週間ほど前から若葉が芽吹き始めました.昨年は花もわずかで,鈴掛けの実もほとんど見られませんでしたが,今年は驚くほど多くの花が咲き,実...
17/04/2026

植樹から3年,ヒポクラテスの木にたくさんの花が咲きました!

2023年3月に植樹したヒポクラテスの木ですが,1週間ほど前から若葉が芽吹き始めました.昨年は花もわずかで,鈴掛けの実もほとんど見られませんでしたが,今年は驚くほど多くの花が咲き,実も豊かに結んでいます.ヒポクラテスの木,つまりプラタナスは芽吹きとほぼ同時に花をつける木であり,若葉とともに新しい命の営みが一斉に始まる様子が印象的です.

昨日,病棟回診のあとに医学生や若手医師とともにこの木を訪れました.私は学生に「ヒポクラテスの誓い」について講義を行っていますが,講義のあと,学生は自らこの木を見に来てくれているようです.そんな話を聞くと,この木が単なる記念樹にとどまらず,医の原点を静かに伝える存在になりつつあることを感じます.

植樹当初は50センチほどの小さな苗木でしたが,いまでは幹こそまだ細いものの,背丈は私の身長の2倍ほどにまで成長しました.この木の成長と重なるように,教室の若手の先生方も日々たくましく成長しています.良い仲間・後輩に恵まれて幸せだと思います.ヒポクラテスの木の植樹にご尽力くださった蒲原宏先生,新保只衛先生も,きっと天国から微笑みながらこの光景を見守ってくださっているのではないかと思います.

26/03/2026

岐阜大学脳内抄読会 第104回 「口腔内細菌由来タンパクは認知症における有用なバイオマーカーとなり得るか」

今週のオンライン抄読会です.今回は医学部4年生の東吉行君の担当で,2025年にMol Cell Proteomics誌に発表された,口腔内細菌と認知症の分子機序に迫る興味深い論文でした.大変完成度の高い発表で,参加者一同,関心しながら拝聴しました.

口腔内環境と認知症の関連は疫学的に知られていますが,本研究はそのメカニズムに踏み込んだ点が特徴です.死後脳から分離した細胞外小胞(EV)を網羅的に解析し,口腔内細菌由来タンパク質が実際に脳内に存在することを示しています.さらに,これらのタンパクはアルツハイマー病の進行段階に応じて変動し,アミロイドやタウとの相互作用も示唆されました.

加えて,血中EVにも同様のタンパクが検出され,in vitroモデルでは細菌由来EVが血液脳関門を通過する可能性も示されています.すなわち,「口腔内細菌→EV→脳」という新たな病態連関の経路が提示された点は,インパクトの大きい知見です.

発表は16分,質疑は18分でした.私も木村先生も容赦なく議論させていただきましたが,それに対する応答も含め,大変立派な内容でした.
Mulet M, et al. Oral Microbiome–Derived Proteins in Brain Extracellular Vesicles Circulate and Tie to Specific Dysbiotic and Neuropathological Profiles in Age-Related Dementias. Mol Cell Proteomics. 2025;24(12):101464.

05/03/2026

岐阜大学脳内抄読会 第103回 「ALSにおける認知機能悪化の頻度と早期予測因子」

今週のオンライン抄読会です.今回は山田恵先生のご担当でしたが,昨年,Ann Neurol誌に発表された臨床においても病態解明においても重要なALSに関する論文でした.ALSは運動ニューロン疾患として知られますが,認知機能も影響を受けることが分かっています.この研究はイタリアの縦断研究で,診断時に認知機能が正常だったALS患者の約27%が1年以内に認知・行動障害を発症することを示しています.また「文字流暢性(FASやECASのverbal fluency)」の低下は,将来の認知機能悪化を予測する重要なサインであることを見出しています.この論文の臨床や病態におけるインパクトについて議論しました.発表は14分,質疑は18分です.
Iazzolino B, et al. Frequency and Early Predictors of Cognitive Deterioration in Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Longitudinal Population-Based Study. Ann Neurol. 2025 Jun;97(6):1122-1133. doi: 10.1002/ana.27194.

19/02/2026

岐阜大学脳内抄読会 第102回 「コーヒーを飲むと認知症リスクが下がる」というのは本当か?

今週のオンライン抄読会です.今回は医学部5年生の桂田未来さんが発表を担当しました.
桂田さんは熱心に病棟実習に取り組んでいますが,ごく最近,SNSで拡散されていた「コーヒーや紅茶を飲むと認知症リスクが下がる」という報告を目にし,その解釈がどこまで妥当なのかを自分自身の目で確かめてみたいと思ったそうです.日常的な嗜好品が認知症予防に関わる可能性があるのであれば,非常に興味深いテーマですし,臨床現場にいる私たちにとっても無関係ではありません.
私自身もこの論文は一通り目を通していましたが,私が感じていた疑問点や重要だと思ったポイントの多くが,丁寧に整理され,的確に議論されていました.データの読み方,効果量の解釈,研究の限界などについてもきちんと考察されており,非常に立派な発表で,大いに感心しました.発表は16分,質疑は12分です.

Zhang Y, et al. Coffee and Tea Intake, Dementia Risk, and Cognitive Function. JAMA. 2026 Feb 9:e2527259. PMID: 41661604

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Gifu-shi, Gifu
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