岐阜大学大学院 医学系研究科 脳神経内科学分野

岐阜大学大学院 医学系研究科 脳神経内科学分野 岐阜大学神経内科・老年学分野の情報と,医師・学生に役に立つ神経内科?

02/05/2026

岐阜大学脳内抄読会 第103,104 回 ALSをめぐる重要な2つのトピックス―安楽死とBrain–Machine Interfaceに2人の若手が挑戦

今週のオンライン抄読会です.この1か月間,脳神経内科で研修を行った2年目の小森拓夢先生と佐藤健龍先生が,いずれもALSに関する新しく,かつ重要なテーマに取り組んでくださいました.

小森先生は,難病医療における極めて重要かつ複雑な倫理的課題である安楽死について,オランダにおけるALS患者の実態を検討した論文を紹介されました.安楽死を選択した患者さんの背景や理由を丁寧に読み解くことで,患者さんのQOL向上につながる示唆が得られるのではないかという問題意識に基づいた発表であり,大変意義深いものでした.発表後には多くの質問や意見が寄せられ,活発な議論が展開されました.一方で,本テーマは単一の論文だけで十分に論じ尽くせるものではないため,最後に私からも解釈の視点について補足説明を行いました.発表19分,質疑29分でした.

一方,佐藤先生は,ALSの進行に伴い患者さんにとって大きな苦痛となる言語機能の喪失に対し,Brain–Machine Interface(BMI)を用いた支援の可能性についての論文を紹介されました.さらに,関連分野の近年の進歩や基本用語についても整理され,理解を深める内容となっていました.論文のまとめ方も非常に現代的で工夫に富んでおり,印象に残る発表でした.お二人ともBMIに強い関心を持っておられるとのことで,将来的にこの分野での研究に挑戦されることを大いに期待したいと思います.発表12分,質疑15分でした.

van Eenennaam RM et al. Frequency of euthanasia, factors associated with end-of-life practices, and quality of end-of-life care in patients with amyotrophic lateral sclerosis in the Netherlands: a population-based cohort study. Lancet Neurol. 2023 Jul;22(7):591-601. PMID: 37353279.

Card NS, et al. An Accurate and Rapidly Calibrating Speech Neuroprosthesis. N Engl J Med. 2024 Aug 15;391(7):609-618. doi: 10.1056/NEJMoa2314132. PMID: 39141853

植樹から3年,ヒポクラテスの木にたくさんの花が咲きました!2023年3月に植樹したヒポクラテスの木ですが,1週間ほど前から若葉が芽吹き始めました.昨年は花もわずかで,鈴掛けの実もほとんど見られませんでしたが,今年は驚くほど多くの花が咲き,実...
17/04/2026

植樹から3年,ヒポクラテスの木にたくさんの花が咲きました!

2023年3月に植樹したヒポクラテスの木ですが,1週間ほど前から若葉が芽吹き始めました.昨年は花もわずかで,鈴掛けの実もほとんど見られませんでしたが,今年は驚くほど多くの花が咲き,実も豊かに結んでいます.ヒポクラテスの木,つまりプラタナスは芽吹きとほぼ同時に花をつける木であり,若葉とともに新しい命の営みが一斉に始まる様子が印象的です.

昨日,病棟回診のあとに医学生や若手医師とともにこの木を訪れました.私は学生に「ヒポクラテスの誓い」について講義を行っていますが,講義のあと,学生は自らこの木を見に来てくれているようです.そんな話を聞くと,この木が単なる記念樹にとどまらず,医の原点を静かに伝える存在になりつつあることを感じます.

植樹当初は50センチほどの小さな苗木でしたが,いまでは幹こそまだ細いものの,背丈は私の身長の2倍ほどにまで成長しました.この木の成長と重なるように,教室の若手の先生方も日々たくましく成長しています.良い仲間・後輩に恵まれて幸せだと思います.ヒポクラテスの木の植樹にご尽力くださった蒲原宏先生,新保只衛先生も,きっと天国から微笑みながらこの光景を見守ってくださっているのではないかと思います.

26/03/2026

岐阜大学脳内抄読会 第104回 「口腔内細菌由来タンパクは認知症における有用なバイオマーカーとなり得るか」

今週のオンライン抄読会です.今回は医学部4年生の東吉行君の担当で,2025年にMol Cell Proteomics誌に発表された,口腔内細菌と認知症の分子機序に迫る興味深い論文でした.大変完成度の高い発表で,参加者一同,関心しながら拝聴しました.

口腔内環境と認知症の関連は疫学的に知られていますが,本研究はそのメカニズムに踏み込んだ点が特徴です.死後脳から分離した細胞外小胞(EV)を網羅的に解析し,口腔内細菌由来タンパク質が実際に脳内に存在することを示しています.さらに,これらのタンパクはアルツハイマー病の進行段階に応じて変動し,アミロイドやタウとの相互作用も示唆されました.

加えて,血中EVにも同様のタンパクが検出され,in vitroモデルでは細菌由来EVが血液脳関門を通過する可能性も示されています.すなわち,「口腔内細菌→EV→脳」という新たな病態連関の経路が提示された点は,インパクトの大きい知見です.

発表は16分,質疑は18分でした.私も木村先生も容赦なく議論させていただきましたが,それに対する応答も含め,大変立派な内容でした.
Mulet M, et al. Oral Microbiome–Derived Proteins in Brain Extracellular Vesicles Circulate and Tie to Specific Dysbiotic and Neuropathological Profiles in Age-Related Dementias. Mol Cell Proteomics. 2025;24(12):101464.

05/03/2026

岐阜大学脳内抄読会 第103回 「ALSにおける認知機能悪化の頻度と早期予測因子」

今週のオンライン抄読会です.今回は山田恵先生のご担当でしたが,昨年,Ann Neurol誌に発表された臨床においても病態解明においても重要なALSに関する論文でした.ALSは運動ニューロン疾患として知られますが,認知機能も影響を受けることが分かっています.この研究はイタリアの縦断研究で,診断時に認知機能が正常だったALS患者の約27%が1年以内に認知・行動障害を発症することを示しています.また「文字流暢性(FASやECASのverbal fluency)」の低下は,将来の認知機能悪化を予測する重要なサインであることを見出しています.この論文の臨床や病態におけるインパクトについて議論しました.発表は14分,質疑は18分です.
Iazzolino B, et al. Frequency and Early Predictors of Cognitive Deterioration in Amyotrophic Lateral Sclerosis: A Longitudinal Population-Based Study. Ann Neurol. 2025 Jun;97(6):1122-1133. doi: 10.1002/ana.27194.

19/02/2026

岐阜大学脳内抄読会 第102回 「コーヒーを飲むと認知症リスクが下がる」というのは本当か?

今週のオンライン抄読会です.今回は医学部5年生の桂田未来さんが発表を担当しました.
桂田さんは熱心に病棟実習に取り組んでいますが,ごく最近,SNSで拡散されていた「コーヒーや紅茶を飲むと認知症リスクが下がる」という報告を目にし,その解釈がどこまで妥当なのかを自分自身の目で確かめてみたいと思ったそうです.日常的な嗜好品が認知症予防に関わる可能性があるのであれば,非常に興味深いテーマですし,臨床現場にいる私たちにとっても無関係ではありません.
私自身もこの論文は一通り目を通していましたが,私が感じていた疑問点や重要だと思ったポイントの多くが,丁寧に整理され,的確に議論されていました.データの読み方,効果量の解釈,研究の限界などについてもきちんと考察されており,非常に立派な発表で,大いに感心しました.発表は16分,質疑は12分です.

Zhang Y, et al. Coffee and Tea Intake, Dementia Risk, and Cognitive Function. JAMA. 2026 Feb 9:e2527259. PMID: 41661604

世代と国を越えた交流のひととき教室の食事会を開催しました.今回は,当教室の発展に大きく貢献してくださった國枝顕二郎先生の栄転をお祝いする会も兼ね,OBを含む多くのメンバーが集まり,終始温かい雰囲気に包まれたひとときとなりました.國枝先生には...
06/02/2026

世代と国を越えた交流のひととき

教室の食事会を開催しました.今回は,当教室の発展に大きく貢献してくださった國枝顕二郎先生の栄転をお祝いする会も兼ね,OBを含む多くのメンバーが集まり,終始温かい雰囲気に包まれたひとときとなりました.國枝先生には,臨床,教育,そして教室運営のさまざまな場面において多大なるご尽力をいただきました.これまでのご貢献に心より感謝申し上げるとともに,新天地でのさらなるご活躍を教室一同,心から願っております.

また今回は,脳神経内科に関心を持ち,日頃から教室に出入りしている医学生や研修医の先生方も多数参加してくれました.岐阜県は人口あたりの脳神経内科専門医数が全国で最も少ない地域ですが,そのような環境の中でも,教室の雰囲気が良いから脳神経内科に興味を持ちましたと言ってくださる学生も少なからずおり,神経学を志す若い世代が着実に増えていることを実感でき,大変嬉しく思いました.次の時代を担う若い先生方や医学生と同じ場で語り合えたことは,私たちにとっても大きな励みとなりました.

さらに今回は,リトアニアから実習に来ていた医学生,グヴァイズディカイテー・ロベルタさんを囲む会でもありました.短い期間ではありましたが,当科での経験を大切に受け止め,将来に向けて真摯に学ぶ姿勢がとても印象的でした.岐阜県で神経学を学びたいという夢が実現するよう,これからも応援していきたいと思います.そしてリトアニアと聞くと,私にとっては杉原千畝の存在が思い浮かびます.遠い異国の地で,自らの信念に従い人道的行動を貫いた杉原千畝は,日本人として誇りに思う人物です.岐阜県八百津町の記念館を訪れた際の感動を思い出しながら,いつかカウナスの杉原千畝記念館も訪れてみたいと改めて感じました.

一方で,今回参加した学生の中には,米国やタイでの臨床実習を終えて帰国したばかりの者もおり,現地での経験を興味深く聞かせてくれました.世代や国を越えて,人と人とがつながることの大切さを改めて実感した一夜でした.これからも教室として,良い医療と良い教育を通じて,こうしたつながりを大切に育んでいきたいと思います.

05/02/2026

岐阜大学脳内抄読会 第101回 「レビー小体型認知症の幻覚に対するDLBの幻覚に対するPimavanserinの安全性・有効性」

今週のオンライン抄読会のご案内です.今回は専攻医1年目の金住峻一先生の発表です.論文は,Parkinson病認知症およびレビー小体型認知症における幻覚・妄想に対するpimavanserinの有効性と安全性を検討したHARMONY試験のサブ解析です.pimavanserinは5-HT2A受容体に選択的に作用する逆作動薬/拮抗薬であり,ドパミンD2受容体を遮断しないという特徴を有します.そのため,従来の抗精神病薬で問題となりやすい運動症状の悪化を来しにくい点から,パーキンソン病関連精神病に適した薬剤と位置づけられています.本解析では,pimavanserin投与群において精神病症状の再発リスクがプラセボ群に比べて有意に低下し,運動機能および認知機能への悪影響は認められませんでした.知覚や現実認知,意味づけに関与する5-HT2A受容体の過剰活性化が幻覚・妄想と関連することを踏まえると,これまでとは異なる受容体を標的とした治療アプローチとして,臨床的にも示唆に富む内容です.
Torres-Yaghi Y, Chrones L, Abler V, Brunson G. Safety and efficacy of pimavanserin in patients with Lewy body dementia experiencing dementia-related psychosis in the HARMONY study. BMC Neurol. 2025 Nov 24;25(1):479. PMID: 41286676

2025年もありがとうございました!昨日,年内最後の病棟カンファレンスのあと,1年のお疲れさまとクリスマスを兼ねて,みんなでささやかな昼食会を開きました.専攻医の伊藤先生のチョイスで,お寿司とピザとチキンとケーキという,なんとも楽しい組み合...
25/12/2025

2025年もありがとうございました!

昨日,年内最後の病棟カンファレンスのあと,1年のお疲れさまとクリスマスを兼ねて,みんなでささやかな昼食会を開きました.専攻医の伊藤先生のチョイスで,お寿司とピザとチキンとケーキという,なんとも楽しい組み合わせになりました.
この1年,大きな事故もなく,みんなが元気に働くことができたことが,何よりうれしいことです.日々支えてくださっている皆さまにも,心より感謝申し上げます.
また来年も,どうぞ変わらぬご支援をよろしくお願いいたします.

25/12/2025

岐阜大学脳内抄読会 第100回 「自己免疫性脳炎におけるグリンファティックシステムの異常と認知機能低下」

今週のオンライン抄読会のご案内です.今回は医学部5年生の鈴木恒星君の発表です.4週間にわたり非常にアクティブに病棟実習に取り組んでくれましたが,その中で病棟に入院されていた自己免疫性脳炎の患者さんに関心を持ち,「この疾患ではグリンファティックシステムはどうなっているのだろうか?」という素朴な疑問を出発点として,中国からの論文を探して分かりやすく紹介してくれました.ほとんどドクターレベルと言ってよい,非常に立派な発表でした.なお,彼は自身が担当した患者さんについても神経学会学術大会で発表予定です.病棟の若手の先生方もしっかりと指導されており,その点も大変素晴らしいと感じました.

オンライン抄読会も今回で第100回を迎えました.学生のみなさんにとっては初めての抄読会であることが多いのですが,毎回驚くほど完成度の高い発表がなされ,ご覧になっている先生方から「どのような教育をされているのですか?」と質問を受けることもしばしばです.もちろん病棟の指導医の先生方の助言が大きいのですが,それに加えて,彼らの能力より少し高いハードルを与えると,ひょいっと乗り越えてしまうところがあり,そこに教育の一つの秘訣があるのではないかと感じています.

Zhang Y, et al. Abnormal glymphatic system in patients with autoimmune encephalitis: Relationship with cognitive performance. Brain Res Bull. 2025 Feb;221:111232. doi.org/10.1016/j.brainresbull.2025.111232.

貸切りビアガーデンと打腱器のネクタイピン神経学に関心を持ってくれている医学生たちと教室メンバーでビアガーデンに行きました.実は先日,BBQ大会を予定していたのですが,大雨で中止になってしまい,その代わりの集まりでした.この時期のビアガーデン...
31/10/2025

貸切りビアガーデンと打腱器のネクタイピン

神経学に関心を持ってくれている医学生たちと教室メンバーでビアガーデンに行きました.実は先日,BBQ大会を予定していたのですが,大雨で中止になってしまい,その代わりの集まりでした.この時期のビアガーデンは貸切り状態でしたが,さほど寒くもなく,ゆっくりと楽しい時間を過ごしました.

そしてサプライズで,誕生日プレゼントとして「打腱器のネクタイピン」をいただきました.特注の銀製品で,完成までに時間がかかったとのことでした.バビンスキー型のハンマーがあしらわれています.とても嬉しかったです.大切に使わせていただきます!  (下畑享良)

30/10/2025

岐阜大学脳内抄読会 第99回「歩行中のUターン速度はパーキンソン病発症の予測因子となる」

今週のオンライン抄読会です.今回は初期研修医の清水裕太先生の発表です.とても面白い論文を分かりやすく紹介してくださいました.ドイツ・テュービンゲン大学のTREND研究グループがAnnals of Neurology誌に発表したもので,歩行中の方向転換動作の低下がパーキンソン病の発症約8.8年前から現れることを報告したものです.50歳以上の地域住民1051名を10年間追跡し,23人がパーキンソン病を発症.腰部に装着した慣性センサーで1分間の歩行を解析した結果,方向転換時のピーク角速度が遅い人ほど将来的にPDを発症するリスクが高いことが示されました.つまり診断の8.8年前からUターンが遅くなっているということです.この研究では,α-synucleinシード増幅アッセイが発症10年前に陽性化すること【Kluge et al., Mov Disord, 2024】,歩行の変動性や非対称性が発症4〜5年前から変化すること【Din et al., Ann Neurol, 2019】も示しているようです.神経変性疾患を発症前に見出す「プレクリニカル診断」時代の到来を予感させる研究です.
Elshehabi M, et al. Turning Slowly Predicts Future Diagnosis of Parkinson’s Disease: A Decade‐Long Longitudinal Analysis. Annals of Neurology. 2025;00:1–10. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ana.78034

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