早稲田大学 災害復興医療人類学研究所

早稲田大学 災害復興医療人類学研究所 自然災害・人為災害からの回復・復興に資する応用医療人類学に基づく調?

早稲田大学辻内研究室では、2025年度、以下9名の卒業論文が提出され受理されましたのでご報告いたします。震災復興に関する人間科学的研究です。抄録については、下記のブログをご参照ください。進藤 永遠「東日本大震災から考える二重の住民登録問題と...
27/04/2026

早稲田大学辻内研究室では、2025年度、以下9名の卒業論文が提出され受理されましたのでご報告いたします。
震災復興に関する人間科学的研究です。抄録については、下記のブログをご参照ください。

進藤 永遠「東日本大震災から考える二重の住民登録問題と今後の展望ーふるさと住民票から考える」
田村 悠「東日本大震災以降に生まれた子どもたちへの伝承のあり方」
外山 佳史「原発事故が生み出した『棄民』に認められる構造とその解決策」
直井 洋晃「原子力が昭和の経済成長に与えた影響と功罪」
丸山  瑛士「福島第一原発事故後の日本における原発教育の現状と課題」
山口 茉亜「震災時避難所の課題分析と将来像の考察」
三浦  元輝「東日本大震災から学ぶ復興まちづくりのあるべき姿」
榎本 史悠「福島県原発事故における被災地に取り残されたペットの実態」
舟根 涼太「現代社会における自己責任ということばの無責任さ」

当研究室では、2025年度、以下7名の卒業論文が提出され受理されましたのでご報告いたします。震災復興に関する人間科学的研究です。抄録については、追ってご報告いたします。進藤 永遠「東日本大震災から考える二.....

24/03/2026

NHKニュース おはよう日本(関東甲信越)初回放送日:3月23日(月)午前7:45~

▽歳月に埋もれた声・原発事故避難者の15年
 東京電力福島第一原発の事故から15年。NHKは早稲田と共同で、避難を経験した人たちへのアンケート調査を実施しました。回答者の一人、首都圏に避難した女性が、心が追い込まれていた実情を語りました。

「一度壊れたものは二度と戻らない。生きているのが辛いを通り越して、消えたい。」
 今回、アンケートで集まった3493人の避難者たちの声。さまざまな分野の専門家と読み解くと、回答者の3割以上にPTSD。心的外傷後ストレス障害の可能性があることがわかりました。中でも高いストレス状態にあったのが、子供以外の同居家族がいないシングルマザーです。その割合は半数を超えています。その中の一人が、匿名で取材に応じてくれました。
 当時、二歳と四歳の子供を連れて首都圏に避難したあんなさん(50代、福島いわきから)です。原発事故の後、夫と離婚。頼れる人がいない土地で仕事と子育てをこなす中で、事故から二年後、体に変が起きました。
「最初の症状は、歩けなくなってしまいました。一歩一歩足を踏み出すのが重くて、まあ、夜も寝れない状態が続いて」。
 診断は、うつ病。さらにあんなさんを追い詰めたのが長男の変化でした。
「上の子がめかみ。ひどくなって。こう。爪切りがいらないぐらい、自分で。全部、爪をかみ切ってしまったりとか。震災がなければ普通に、福島にいて、自分が理想としていた子育てをしてたと思うんですけど。親としては、なんかこう、申し訳ないっていうか。」
 そうした中、拠り所となったのは、東京で避難者家族を支援している団体です。この日あんなさんは、団体が開くピアノ教室に参加しました。隣で演奏するのは爪を噛んでいた長男。高校三年生になりました。長男がピアノに関心を持っていると伝えたところ、定期的に教室を開いてくれるようになったのです。さらに、他のイベントでは、同じ立場の母親達とも繋がり、孤独感が徐々に和らいでいったといいます。
「子供たち同士も仲良くなったり、楽しそうに遊んでいる姿を見ると、親としても、すごくホッとする。お母さんはお母さんで、被災者同士で集まって、悩みとかそういう近況報告とか、そういう話し合いができたので、東京で頑張ってるのは、なんか自分だけじゃないだな。」
 しかし、原発事故から十年を境に、支援団体に対する国や自治体の補助は、段階的に縮小してきました。あんなさんたち親子を十年以上見守ってきた信木美穂さん(きらきら星ネット代表)です。今後、避難者の孤立が進むのではないかと、危機感を抱いています。
「民間の団体だったり、ボランティアの団体ができることには限りがあるので、国と自治体にはもっと関わって、丁寧にやってほしかったなっていうことをすごこう感じる場面が多々ありました。独立している方に対しては、とにかく、その、誰かとつながって欲しい。」

 今も福島県から避難を続ける人は、国が把握しているだけで2万3千人以上にのぼっています。事故は今も続いてます。引き続き切れ目のない支援が求められています。

私どもWIMA研究所とNHK仙台・福島放送局との共同調査の結果が、下記のニュースで報道されました。>NHKニュース おはよう日本(関東甲信越)ニュース・中継・リポート配信中初回放送日NHK総合テレビジョン3月23日(月)午前7:45配信期限...
24/03/2026

私どもWIMA研究所とNHK仙台・福島放送局との共同調査の結果が、下記のニュースで報道されました。

>NHKニュース おはよう日本(関東甲信越)

ニュース・中継・リポート
配信中
初回放送日NHK総合テレビジョン3月23日(月)午前7:45
配信期限3月30日(月)午前8:00
▽歳月に埋もれた声・原発事故避難者の15年 【キャスター】高井正智,中山果奈,【気象キャスター】檜山靖洋

【NHK】▽歳月に埋もれた声・原発事故避難者の15年 【キャスター】高井正智,中山果奈,【気象キャスター】檜山靖洋

辻内研究室では、2024年度、以下9名の卒業論文が提出され受理されましたのでご報告いたします。震災復興研究、医療人類学研究に関する研究です。抄録については、追ってご報告いたします。荒井万由佳「福島県におけるツーリズムの社会的価値と災害伝承の...
24/03/2025

辻内研究室では、2024年度、以下9名の卒業論文が提出され受理されましたのでご報告いたします。
震災復興研究、医療人類学研究に関する研究です。抄録については、追ってご報告いたします。

荒井万由佳「福島県におけるツーリズムの社会的価値と災害伝承の重要性」
笠田悠「いわき市における社会的分断について」
櫻田昂樹「福島原発事故の被害に遭った同世代に関する研究」
津乗静花「福島第一原子力発電所事故において母親たちの抱えた困難及びニーズ」
野原颯太「日本で原発・放射線教育を普及する際の課題」
藤本奈津子「原発事故後の福島県における原発教育の実態」
八木洋輔「福島原子力災害の避難区域および賠償金の設定における合意形成に関する研究」
渡辺樹「日本の原子力政策のあり方について」
小野寺よし子「認知症とともに生きる人々の語り- パーソンセンタードケアの考察」
http://blog.livedoor.jp/tsujiuchi_labo/

◆そのほか教育・社会・文化・防災などに関連した研究・科学技術社会論から見る福島原子力発電所事故(2015)・東京都防災の現状と課題(2019)・日本の放射線教育について(2019)・政治的背景から見た浜岡原子力発電所の今後(2020)・南海...
16/11/2024

◆そのほか教育・社会・文化・防災などに関連した研究
・科学技術社会論から見る福島原子力発電所事故(2015)
・東京都防災の現状と課題(2019)
・日本の放射線教育について(2019)
・政治的背景から見た浜岡原子力発電所の今後(2020)
・南海地震に対するコミュニティ防災のあり方(2020)
・日本におけるデモの社会的影響についての考察(2020)
・外国人被災者を対象とした震災支援に関する調査研究(2020)
・東日本大震災における災害伝承の意義(2021)
・被災地における仏教の意義-宗教的ケアを行なった仏僧の語りから(2021)
・福島原発事故における放射能汚染の新聞報道から考察するメディアのあるべき姿(2022)
・原子力発電をめぐる日韓独仏の比較研究(2023)

<参考文献>
辻内琢也:原発避難いじめの実態と構造的暴力.戸田典樹(編著):福島原発事故 取り残される避難者-直面する生活問題の現状とこれからの支援課題.明石書店,pp14-57,ISBN:9784750346519,2018【文献A】
辻内琢也,滝澤柚,岩垣穂大,佐藤純俊:原発事故避難者受け入れ自治体の経験;ソーシャル・キャピタルを活用した災害に強いまちづくりを目指して.関谷雄一,高倉浩樹(編):震災復興の公共人類学.東京大学出版会,pp133-167,ISBN:978-4-13-056118-1,2019【文献B】 
辻内琢也,増田和高:フクシマの医療人類学;原発事故・支援のフィールドワーク.遠見書房,2019【文献C】
辻内琢也:慢性状態の急性増悪―原発事故被害者に対する構造的暴力の解明.辻内琢也,トム・ギル(編):福島原発事故被災者 苦難と希望の人類学―分断と対立を乗り越えるために.明石書店:pp49-100,2022【文献D】

16/11/2024

◆東日本大震災および原発事故からの復興に着目した研究
・東日本大震災における内側からの復興-福島県葛尾村の場合(2015)☞【文献Cに一部収載】
・震災支援における復興支援員の役割(2015)☞【文献Cに一部収載】
・当事者ボランティアの意義と恩恵(2015)☞【文献Cに一部収載】
・所沢市内の避難者との関わりから見るコミュニティカフェの意義と恩恵(2016)
・福島県川内村からみる原発事故からの復興(2016)
・原発事故後の福島県漁業の現状から考える復興(2016)
・野球が人々の心の復興に果たした役割―原発事故被災者の語りから(2016)
・災害復興と地域創生のためのビジネスモデル(2016)
・東日本大震災での人生観の変容(2017)
・災害時に地域コミュニティが果たす役割について(2017)☞【文献Bに一部収載】
・福島原発事故後のリスクコミュニケーション(2017)
・災害の風化に抗おうとする報道関係者の思い(2018)
・時間と共に風化していく当時の記憶をいかに守るか(2020)
・復興オリンピックがもたらす影響と課題(2020)
・阪神淡路大震災と東日本大震災から考える今後の復興公営住宅の在り方(2020)
・大震災後の東北ライブハウス大作戦の活動から見る“音楽の力”(2021)
・復興五輪が福島にもたらしたもの―あづま球場に着目して(2022)
・福島原発事故後の山形県における避難者行動および避難者支援策(2022)☞【第64回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜)2023にて発表】【第64回日本社会医学会総会(東京)2023にて発表】
・復興五輪による福島県産物への風評被害払拭の効果(2022)☞【第64回日本社会医学会 ポスター発表ヤングリサーチャー部門優秀賞 受賞】

16/11/2024

8.辻内ゼミにおける10数年間の研究成果

◆東日本大震災および原発事故の被害に着目した研究
・自身の震災の体験から支援の形を考える(2011)
・原発避難者の抱える苦悩(2012)
・福島第一原子力発電所事故をめぐる実態と支援(2013)
・原発避難における喪失の語り(2013)
・賠償格差から生じる人間関係の分断について(2015)☞【文献Cに一部収載】
・母子避難者の苦悩と生活支援のあり方について(2015)☞【文献Cに一部収載】
・応急仮設住宅から生まれるストレス問題(2015)☞【文献Cに一部収載】
・福島原子力発電所事故による放射線汚染の実害と風評被害への対策(2015)
・東日本大震災および福島原発事故の海外と日本―それぞれの見方に関する比較研究(2016)
・放射線被ばくから子どもを守るためにできること(2016)
・原発労働者の過去・現在・未来(2016)
・「原発避難いじめ」から考える日本社会における差別意識の問題(2017)☞【文献Aに一部収載】
・原発事故後に制定された被災者支援に関連する法律の問題点・改善点(2017)
・「原発(避難)いじめ」の構造を探る(2017)☞【文献A,Dに一部収載】
・原発事故から考える日本社会の問題点(2018)
・フクシマ後の食の安全(2019)
・新潟水俣病から福島を考える(2019)
・福島原発事故による「ふるさと喪失」の影響と故郷への想い(2019)
・福島原発事故による地域コミュニティの変容(2019)
・放射能汚染地図を作成した市民の活動とマスメディアの報道(2020)
・原発事故における自己責任論の問題性(2020)
・原発事故による「形のないものの喪失」の構造についての研究(2020)☞【第2回日本心身医学関連学会合同集会(大阪),2019にて発表】【第62回日本心身医学会総会(高松),2021にて発表】
・福島県喜多方市における東日本大震災から現在も続く問題や被害に関する研究(2021)☞【第64回日本社会医学会総会(東京)2023にて発表】
・茨城県における東日本大震災および福島原発事故の対応と報道の課題-低認知被災地と茨城県(2022)☞【第64回日本社会医学会総会(東京)2023にて発表】

16/11/2024

6.「分断と対立」を乗り越えるための今後の方策
原発事故によって生じている「分断と対立」を乗り越えていくために、これまで以上に、多様な立場の方々のお話に耳を傾けていきたいと考えております。そして、さまざまなものの見方を知ることから始め、一見対立する考え方であっても、会話や対話によってお互いを認め合えるような、異文化が共存できる社会を実現していくための方向性を探求してまいりたいと思います。

7.「文化人類学」を基盤においた辻内ゼミの研究の基本的スタンス
辻内ゼミでは、東日本大震災や原発事故に被災された方達から学びながら、東北や福島の現実を知り、さらには日本の社会の根底にある問題に気付いていくことを目的として指導を行ってきました。そのなかで、個々の学生達が調査研究を通じて発見したことを、ひとつひとつ大切にするスタンスをとってきました。ゼミの基盤となっている「文化人類学」という学問的スタンスは、多様な文化的価値観の共生をめざすものです。学生達が実践してきた研究には、原発事故の被害の大きさに着目した研究がある一方で、福島の力強い復興に着目した研究もあります。
辻内ゼミでの研究の成果として、これまでのゼミの学生達が実施してきた研究テーマを紹介させていただきます。これらの研究は、医学・心理学・社会学・福祉学・文化人類学・環境学を包含した「人間科学」としての卒業研究・修士論文研究です。

16/11/2024

3.「フクシマ」に寄せられた意見
 このたび、私ども研究チームに寄せられた意見には、大きく二通りの考え方がありました。原発事故に被災された多くの方々からは、カタカナで表記すべき「フクシマ」の被害は現在も終わっていないので、カタカナ表記で研究を続けて欲しいという意見をいただきました。その一方で、「フクシマ」というカタカナ語は原発事故という現象を象徴するものであり、復興・再生を目指している福島県内にお住まいの方々から心が傷つくというご指摘もたくさんいただきました。どちらの見解も尊重されなければならないと考えます。

4.原発事故に被災された方々を傷つけないために
これらのご意見を踏まえて、研究チームでは、「フクシマ」という呼称はやはり福島県にお住まいの方々に負担を強いる言い方であるという認識に至りました。また、このタイトルが、私たちが避けたいと考えてきた「原発事故を『福島県』だけの問題に囲い込んでしまう」図式を強めてしまう可能性もあると考えるに至りました。
繰り返しになりますが、この10数年間一貫して、原発事故による被害を受けた多様な方々に寄り添うことを目標にして調査研究活動を行ってきた研究グループとして、福島の方々の心を傷つけることは本意ではありません。

5.WHO推奨ベストプラクティスに関して
もう1点、WHOが提唱しているベストプラクティスについては大変重要なご指摘です。地名を冠した病名が推奨されないことは、感染症の病名を中心に議論されてきました。しかし、そのほかの疾患においても、特定の病名が特定の宗教的・民俗的・地域的コミュニティのメンバーに対する反発や差別を引き起こしたり、旅行・商業・貿易などの分野において障壁を作ったりするようなことは避けるべきだと私たちも考えます。
結論としまして、今後、研究を進めていく際には、「フクシマ型PTSD」を「原発事故型PTSD」に訂正して使用していくことにいたします。これまでに発表してきました学術論文においては、学会編集部にレターを送付し文言の訂正を行って参ります。なお、既に出版されている書籍に関しては、タイトルの変更が出来ない点はご了承ください。

16/11/2024

2.「フクシマ型PTSD」と名付けた経緯
 私達の研究グループが、原発事故避難者・被災者・被害者に特有のメンタルヘルス状況として「フクシマ型PTSD仮説」を提示したのは、この①と②の意味を込めてのことでした。

 一般的なPTSDは、戦争や事故などといった一回性の激しいトラウマ体験が原因となる「急性単発型」と、虐待やDVのように繰り返しトラウマ体験にさらされる「慢性反復型」に分けられますが、福島原発事故の場合はこのふたつが組み合わさった形になっているのではないかという仮説がたてられました。2012年から毎年継続して実施してきた大規模アンケートによるPTSD症状の強さに関するデータと、個別のインタビュー調査、そしてフィールドワーク調査の結果から、古くから指摘されてきた急性単発型だけではなく、原発事故発生後の社会・経済・政治的要因によって徐々に形成されていく慢性反復型のPTSDを検討していかなければならないことを指摘したものです。

 最初にこの仮説を提示したのは、2015年5月27日にNHK(Eテレ)で放映されたハートネットTV『原発事故・避難者アンケート―何が福島の人々を苦しめているのか』においてです。この番組は、2015年6月3日、8月18日、8月25日に再放送されています。当初は漢字で「福島型PTSD」と表記しておりました。その後、研究を続けていくなかで、この仮説は、原発事故避難者・被災者・被害者において、かなり頻度が高く認められる現象であることがわかってきました。2019年および2020年に、さいたま地方裁判所および大阪高等裁判所に提出された意見書『福島第一原子力発電所事故被害者に持続する甚大な精神的苦痛―精神的ストレスと社会・経済的要因に関する人間科学的実証研究から』では、この仮説の詳細を記しました。学術界でこの仮説を発表したのは、2021年に行われた「第20回日本トラウマティック・ストレス学会」で学会奨励賞「優秀演題賞」受賞した発表『福島原発事故首都圏被害者に持続する甚大な精神的被害―人間科学的実証研究から』になります。

 2024年に意見書を一般書籍として出版する際に、それまで漢字で表記していた「福島型PTSD」を「フクシマ型PTSD」に変更しました。なぜならば、福島という漢字では直接的に“福島県”がイメージされてしまう危険性を感じたからです。原発事故の被害は、決して福島県の県境で留まっているわけではなく、広く東北地方から関東甲信越地方、さらには日本全体に広がっている被害であり、ヒロシマ・ナガサキ・チェルノブイリに匹敵する国際的に見つめていかなければならない普遍的な事件だと考えたからです。この被害とは、放射性物質の空中および土壌への拡散だけを指しておりません。心理的被害、社会的被害、経済的被害を含む複合的な被害を意味しています。

16/11/2024

「フクシマ型PTSD」から「原発事故型PTSD」に変更:地域への配慮と今後の研究の方向性

三和書籍『フクシマ型PTSD”今やらねばならぬこと”』を出版して以来、カタカナで表記された「フクシマ」についてたくさんご指摘をいただきました。この1カ月半、福島県在住の研究者も含めて、研究チーム内外で議論を重ねて参りました。

原発事故の被害を受けた方々に寄り添うことを目標に、これまで調査研究活動を行ってきた研究グループとして、福島の方々の心を傷つけることは本意ではありません。この名称に対する批判を受け、私たちは、改めて大事な点に気づかされました。第一に考えなければならないことは、多様な福島の方々の気持ちに寄り添うことの重要性です。
今後、研究を進めていく際には「原発事故型PTSD」に訂正して使用していくことにいたします。

 カタカナで表記する「フクシマ」について、研究チームでは、以下のような検討を重ねて参りました。簡潔にご紹介いたします。

1.カタカナ語「フクシマ」に関する先行研究のまとめ
 新聞記事(読売・朝日・河北新報・福島民報)のディスコース分析(日本マス・コミュニケーション学会:小林,2013)では、「フクシマ」という表記は、スリーマイルやチェルノブイリといった過去の重大な原子力発電所事故や、福島第一原子力発電所事故への世界各国の反応と関連して使用されてきたと述べられています。負のイメージの「フクシマ」を克服して、豊かな実りと美しい風景を取り戻すために「ふくしま」という平仮名表記が、復興と再生の象徴として使用されるようになったことも紹介されています(小林,2013)。
歴史政治学者の小菅(日本原子力学会:2014)は、「フクシマ」というカタカナ表記は東京のマスメディアが作ったものであって、福島の人々や同地の地方紙が始めた表記ではないと述べています。そして小菅(2014)は、“原発事故による被害の越境性”、“問題の国際的共有”や“反原発運動を促進するための国際連帯への期待”をみて取れると同時に、多かれ少なかれ、“最も苦痛を強いられている被害者への排他性や攻撃性”、“原子力の神話化”(※ここでは、一般的に知られている安全・安心神話とは異なり、被害や犠牲を神聖化する意味で使用されている)が観察しうると述べています。
相馬市生まれである河北新報の編集員・寺島(日本災害復興学会:2016)は、原発事故による最も深刻な被災地は浜通りの双葉と相馬地方であり、それを「フクシマ」とひとからげに扱うことに違和感があり、そもそも福島県の人が自分のいる場所を「フクシマ」とカタカナで考えたことがない、と述べています。
 このような先行研究をまとめると、①原発事故という破局的な事象を象徴する「フクシマ」と、②人類共通の課題である核廃絶と平和への祈りを込めた「フクシマ」、そして、③原発事故によって被害を受けた福島を搾取し抑圧してしまう言葉としての「フクシマ」という意味が認められることがわかります。

<参考文献>
小林宏朗:新聞で語られた東日本大震災における「フクシマ」と「ふくしま」(2013).日本マス・コミュニケーション学会,2013年度秋季研究発表会・研究発表論文:1-6,https://mass-ronbun.up.seesaa.net/image/2013fall_C4_Kobayashi.pdf,2013
小菅信子:「原子力の神話」化と戦後日本のナショナリズム.日本原子力学会56(6):6-7,2014
寺島英弥:被災地で聞かれぬ言葉、当事者の言葉.日本災害復興学会「復興(15号)」7(3):12-17,2016

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